退職を決意した時、まず頭に浮かぶのは退職届と退職願のどちらを提出するのだろうか!?
退職届と退職願の違いはたった一字。だからどちらを提出してもあまり違わないだろうって思う方、いますよね。
また退職願は単なるお願い、退職届は強い気持ちの表明、というように理解している方もたくさんいます。
いま会社で人事労務を担当していますが、退職者のほとんどが退職願を提出してくれました。
理由を一々聞いてませんが、退職願が一般的のようだからとか、退職願はお願いで当たり障りないから、ということなのだと思います。
ところがです、両者の違いはとても大きいのです!
誰にも起こりうる身近な問題ですが、法律もからみ実際はよく分かっていない方がたくさんいます。
そこで、退職届と退職願、両方よく分かる判例もご紹介しながら、両者の大きな違いと、どの書類をどのように提出したらいいかについてもご紹介します。
退職届と退職願の違いは大きい
「退職届と退職願の違い」は、とても大きいです!
この章では、両者の違いとその内容をご説明していきますネ。
退職届と退職願の違いは2つ
ズバリ、違いは2つです。
◆1つ目は、承諾が「必要」か「不要」かです。
退職届・・・「承諾が不要」⇒退職を通告して手続きを一気に進める。
退職願・・・「承諾が必要」⇒会社にお願いして承認してもらう。
- 退職届:退職届(解約通告)を提出⇒退職成立
- 退職願:退職願(お願い)を提出⇒会社側が承諾⇒退職成立
◆2つ目は、書類が「撤回できる」か「撤回できない」かです。
退職届は、提出したら、特別な事情がない限り退職届の撤回はできません。
退職願は、会社側が承諾する前であれば、退職願の撤回や退職日の変更ができます。承諾後は撤回できません。
退職願と退職届の違いが大きいことが分かりました。では、それぞれ詳しくみていきましょう。
退職届
退職届を提出すれば、退職の意思表示が一方的に行われ、提出時点で退職が成立します(承諾というプロセスがない)。
つまり、流れは…
- 退職届(一方的な解約通告)を提出⇒退職が成立!
ところで、退職届による解約通告が認定された分かりやすい判例を見つけました。
経済的に転職するしか方法がない労働者が、提出時期や就業規則の規定など入念に考慮の上、「退職届」で労働契約の解約を会社側に通告した。
しかし、会社側は拒否し退職を認めなかった。
提出した「退職届」は退職のお願いではなく、解約通告をしたのであり労働者の退職が認められた判例です。
(平成9.6.20 東京地裁)
退職届にて、労働者が会社側に退職の意思表示をした場合、会社側の承諾がなくても解約日が特定された判例です。
ご覧のように退職届は強制力が強いので、こんな注意も必要になってきます。
一旦退職届を提出したら、特別な事情がない限り退職届の撤回はできません。提出する際ホントウに出していいのか、十分確認してくださいね。これ要注意ですよ。
退職願
退職願を提出して退職のお願いをした場合、会社側が承諾した時点で退職が成立します。
つまり、流れは…
- 退職願を提出⇒会社側が受理(承諾)⇒退職が成立!
会社側が承諾する(解約が成立)前であれば、退職願の撤回や退職日の変更ができます。ただし、承諾(退職が成立)後は撤回できません。
あっちょうど承諾後の撤回が不認定となった判例を見つけましたのでご覧ください。
労働者が提出した退職願を、承認の決定権者である人事部長が即時受理した。
翌日、労働者が退職の意思表示を取り消す旨申し入れたが、人事部長は拒絶した。
雇用契約の合意解約が成立したものと解するとした会社側が勝訴した判例です。
(昭和62.9.18 最高裁)
もう一度言います。会社が承諾する前は撤回できますが、承諾後は撤回できません。
ホントウに退職してよいのか、しっかり自問自答してから提出してくださいね。
解雇通知書と辞表
上記2例は、労働者側からの解約の意思表示でしたが、会社側から労働契約解約の意思表示をされることがあります。たとえば解雇。会社から解雇通知書が渡されますで、退職届も退職願も提出する必要ありません。念のため(笑)。
また、よくテレビドラマで社員が「辞表」を提出して辞めてやる! なんて言っているのを見たことありませんか?
「辞表」は一般社員(雇用契約)が提出するものではなく、取締役などの役員や公務員(雇用契約ではない)が辞める時に提出する書類です。
退職届と退職願のどっちを提出?
「退職届」と「退職願」の違いが分かりましたか。
では退職を決意したら、どちらを・いつまでに提出したらいいのでしょうか?
タイミングが大事で、いきなり書類を提出するのはダメですヨ。
切り出し方は・・・上司に相談という事で話しかけてみることをオススメします!
上司としては、社長や部長などの責任者に話さなければならないため、その場では退職願を受け取ることを避けることが多いです。
ではいつ行くか?
まず就業規則を確認してください。たとえば「退職する1ヶ月以上前に退職届を提出すること」等と記載があれば、引き継ぎ期間も必要ですので退職の1ヶ月半前にまず相談してください。
以上をふまえて、退職日は口頭でもいいから上司に告げておいてください。意思表示は口頭でも有効です。そしてしばらく上司からの返事を待ちましょう。
■後日、退職願または退職届を出すように言われたらそのようにしましょう。
いざ退職願または退職届を書く際、手書きにするか・パソコンで作成するか悩む方がいます。パソコンで全く問題ありませんが、捺印だけは忘れずにお願いしますね。
■もし、1週間経っても返事がなかったら、そのときは退職願を提出してください。
会社が退職願を受理しない場合でも、民法では退職の意思表示をしてから2週間経過すると退職できるとされていますので、ほっといても退職できます。
■退職願を受理しない場合、どうも不安が残るまたは万全を期すのであれば、最後の手段を使いましょう。
「内容証明で退職届」を郵送してください。日本郵便の配達証明書類が手元に残るので、期日が来れば退職できます。
終わりに
退職願と退職届の違いは、たった一字ですがとても大きいんです。
違いは2つありました。
◆1つ目は、会社側の「承諾」 退職届は不要!退職願は必要!
・退職届:退職届(解約通告)を提出⇒退職成立
・退職願:退職願(お願い)を提出⇒会社側が承諾⇒退職成立
◆2つ目は、書類の「撤回ができる」か「撤回ができない」か
退職届を提出したら、特別な事情がない限り退職届の撤回はできません。
退職願は、会社側の承諾前であれば、退職願の撤回や退職日の変更が可能です。承諾後は撤回できません。
何れにしろホントウに退職してよいものか、再確認してから提出してくださいね。
提出の仕方にもタイミングと順序があります。
まず、手ぶらで上司に相談(退職日は口頭で伝える)、1ヶ月半前。
1週間経っても返事がなかったら、退職願を提出。
退職願を受理しない場合、不安であれば、内容証明で退職届を郵送。
以上、手順を間違えないように、そしてご健闘をお祈りします。