あなたは、目上の人に「感謝」を述べるとき、何と言いますか。
「感謝申し上げます」とか「感謝いたします」がよく使われている表現ですが…
「感謝しております」も、目上の人に使える正しい敬語表現なんですよ。
ありふれた言い方に聞こえますが、「感謝・し・て・おり・ます」のように5単語に分解できます!
この5単語それぞれの意味が特徴的で、説明が長文になってしまいました(笑)
では「感謝しております」は正しい敬語表現です!なぜ目上の人に使ってもOKなのかを中心に、相手先別の使い方などをご一緒に見ていきましょう。
まず意味から順にご覧ください。
目次
「感謝しております」の意味
意味を解説
「感謝しております」には、謙譲語(謙譲語II)が含まれていますが、意味から見ていきましょう。
「感謝しております」の意味は・・・
- 「有り難いという気持ちが続いております」です。
この表現は、感謝の気持ちが続いている様子を、心を込めて丁重に表した言葉です。
「感謝・し・て・おり・ます」の意味を詳しく解説
まず、「感謝・し・て・おり・ます」を分析します。
名詞の「感謝」+動詞の「する」で「感謝する」という、サ行変格活用動詞(略称:サ変動詞)となります。
また「感謝して」とは、サ変動詞「感謝する」の連用形「感謝し」+継続の接続助詞「て」のこと。
一方、「おります」は、「おる」の連用形「おり」+丁寧語「ます」のこと。
「おる」は、補助動詞「いる」の謙譲語II(丁重語)(※注1参照)です。
以上の分析結果から「感謝しております」とは、謙譲語IIなどを用い自分の立場を十分理解した上で、「感謝の気持ちが続いている様子を、心を込めて丁重に表した言葉」なんですね。
※注1:「おる」は、2007年の文化庁文化審議会「敬語の指針」によると、謙譲語II(丁重語)で、自分側の行為などを相手に対して丁重に述べるものとされています。
第二話「敬語の基本」理解度チェックの解答
中略
【3】謙譲語II(丁重語)(「参る・申す」型)
自分側の行為・ものごとなどを,話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
<該当語例>
参る,申す,いたす,おる,拙著,小社
(引用元:文化庁 第二話「敬語の基本」理解度チェックの解答
「感謝しております」は目上の人に使ってもOK
ビジネスシーンではよく「感謝申しあげます」とか「感謝いたします」などが使用されています。
では何故「感謝しております」を目上の人に使っても大丈夫でしょうか?
丁重語で目上に正しい敬語表現だから、使って大丈夫
結論から言います。
- 「感謝しております」は、目上の人に使える正しい敬語表現です!
第1章で意味を詳しくお伝えしましたが…
- 「感謝しております」の「おり」は、謙譲語II(丁重語)
- 丁寧語の「ます」も、付加されている
よって、「感謝しております」は、謙譲語II(丁重語)+丁寧語が使用されており、目上に対して自分の立場を意識した、敬意度の高い敬語表現と言えます。
つまり、上司など目上の人に対して使ってもOKで、正しい敬語表現というわけですね。
ただ、ビジネスシーンでは「感謝しております」の使用頻度は高くありません。
特に社長や取締役のような特別な方には、ビジネスで一般的な「感謝申し上げます」を使った方が無難かもしれません。謙譲語I+丁寧語を使用し最高の敬意を表す表現ですのでお勧めします。
「感謝しております」の相手別使い方と例文
上司に対する使い方
単に「感謝しております」とだけ伝えても、本当の感謝の気持ちが上司に伝わるとは限りません。
感謝の言葉には、具体的な感謝の理由も添えて伝えることをおススメします。
力強いサポートをいただきまして、お陰様でプロジェクトが成功しました。大変感謝しております。
お客様に対する使い方
特にお客様には、伝えるタイミングも大切です。昨日の行為に対して、翌朝すぐに感謝を表すことは、相手との信頼関係が良好に保たれることに繋がります。
昨日は大変お世話になりました。田中様の優しい心遣いに、心から感謝しております。
相手が感謝する時「感謝しております」は使えない
「感謝しております」は、相手の行為や親切に対して、謙譲語II(丁重語)表現を使ったのですね。
ところが、相手(例えば上司)自身が感謝している時、話し手(例えば私)は尊敬語表現の「感謝されています」を使用します。
チームの成功のためにメンバー全員が力を合わせました。リーダーを担当した課長は、たいそう感謝されています。
「感謝されて・います」の意味を解説します。
「感謝されて」とは、サ変動詞「感謝する」の未然形「感謝さ」+尊敬の助動詞「れる」の連用形「れ」+継続の接続助詞「て」を合体。
「います」とは、「いる」の丁寧語です。
よって「感謝されています」の意味は、「(相手の方は)感謝のお気持ちが続いていらっしゃいます」です。
まとめ
文化庁の「敬語の指針(2007年)」では、謙譲語を謙譲語Iと謙譲語II(丁重語)の2種類に分けて説明しています。
元々は一つだった謙譲語は、謙譲語Iと謙譲語II(丁重語)に分けて複雑化しましたが、謙譲語Iと謙譲語IIの違いが分かっていただけましたか。
「感謝しております」は、謙譲語II(丁重語)+丁寧語が使われ、目上に対して自分の立場を意識した、敬意レベルもかなり高い敬語表現したね。
つまり、上司など目上の人に対して使ってもOKで、正しい敬語表現というわけです。
ただ、内外を問わず社長や取締役には、ビジネスで一般的表現の「感謝申し上げます」のような謙譲語I+丁寧語を選択するのが、ベストな使い方と言えるでしょう。