「わかる」を国語辞典で引くと、同じ訓読みの「分かる」「解る」「判る」が掲載され、共通の意味として説明されています。

分かったと手をたたく女性
ところが常用漢字表によると、「わかる」と訓読みできるのは「分」のみ。つまり常用漢字表には「分かる」だけが存在し、「解る」と「判る」は存在しません。

まず前半で、「分かる」「解る」「判る」の意味を解説します。共通の意味として説明されているので混乱しないでご覧ください。後半で、常用漢字表を意識した3者の使い分けを見ていきます。


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「分かる」「解る」「判る」の意味が4つ

さっそく精選版国語大辞典で「わかる」を引くと、「分かる」「解る」「判る」の共通の意味が4つ(①②③④)説明されています。読み方は3者とも同じですが、送り仮名は違います。

①は「分かる」だけの意味。②③は「分かる」と「解る」の共通の意味、最後の④は「分かる」と「判る」の共通の意味です。

つまり整理するとこんな感じです。

  • 「分かる」の意味は、①②③④
  • 「解る」の意味は、②③
  • 「判る」の意味は、④

ではこれから「分かる」「解る」「判る」の意味を順にお伝えします。

「分かる」の意味は4つ、内3つは「解る」「判る」と共通

「分かる」:
①1つのものが別々になる。区分される。
②物事の意味、内容、事情、区別などが了解される。
③物解りよく世情に通じる。

④事実などがはっきりする。判明する。
(引用元:精選版国語大辞典)

まず「分かる」の本来の意味は、①だけです。

漢和辞典によると、「分」は「八」と「刀」を合わせた漢字。意味は、「刀」で「八」の字型に二つに切り分ける。別々にする。まさに①の意味通りですね。

次の②③④は、①から派生した意味です。しかも「分かる」の辞書の表記(②③④)は、「解る」(②③)または「判る」(④)の意味もカバーする、いわば共通使用される構造になっています。

共通使用(②③④)の意味については、次節と次々節に譲りますのでご覧ください。




「解る」の意味は2つ、「分かる」と共通

「解る」:
②物事の意味、内容、事情、区別などが了解される。
③物解りよく世情に通じる。

(引用元:精選版国語大辞典)

次は、「解る」(②③)の意味を解説しましょう。

まず「解」は「牛」と「角」と「刀」を合わせた漢字。「刀」で「牛」の体や「角」をバラバラに解き分けることで、②の意味のように細部の区別が解ります。

また「解」には、「理解」「話の解る人」などと用いられるように「物事の意味や事情などが解る」「物解りよく世情に通じる」という意味があります。

つまり「解る」は、②と③の意味、に他なりません。

「判る」の意味は1つ、「分かる」と共通

「判る」:
④事実などがはっきりする。判明する。
(引用元:精選版国語大辞典)

最後に、「判る」(④)の意味を詳しく見ていきましょう。

まず「判」は「半」と「刀」を合わせた漢字。さらに「半」は「八」+「牛」。「刀」で「牛」を「八」の字型に真っ二つに切り分け、善し悪しを見分けること。まさに④の意味ですね。

OKかNGか、今は白黒をつける時
また「判」には、「判別」「判明」などと用いられるように「はっきりと見分ける」「はっきりとわかる」という意味があります。

つまり「判る」は、物事を白黒はっきりつけること、しっかり区別すること、に他なりません。


「分かる」「解る」「判る」の使い分け方は?

使い分け基準、一般は「分かる」のみ、詩は全てOK

使い分けする前に、3者の使い分け基準を整理しましょう。

常用漢字表によると、「分」「判」「解」の中で、「分」のみが「わかる」と訓読みできると定められています。

  • 「分かる」は、常用漢字表で使用できる
  • 「解る」「判る」は、常用漢字表で使用できない

この常用漢字表の定めを、漢字使用するための基準と考えてよいのでしょうか。

常用漢字表 前書き
1 この表は,法令,公用書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すものである。
2 この表は,科学,技術,芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。
以下省略
(引用元:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号))

常用漢字表の前書きでは漢字使用の目安ですが、現実は常用漢字表の定めが従うべき基準となっており、小中高校の教科書もこの基準で出版されています。

ただ芸術などの分野や個人の表記にまで及ぼすものではないようです。

以上から、一般の社会生活における使い分けは常用漢字表を意識して「分かる」を用い、詩などを書いたりするときは「解る」「判る」を加えて使い分けるとよいでしょう。

「分かる」「解る」「判る」「わかる」の使い分け事例

一般の使い分け基準は、「分かる」のみ使用しますが、実際の使い分けもほぼ同じようですね。

現在、法令文書・公用文書・新聞などは、常用漢字表を意識して「分かる」が用いられ、「解る」「判る」はほぼ使用されていません。

そこで多くの人が関わるビジネス文書の作成については、基本的に「分かる」を使用することをお勧めします。「解る」を使用したところ、相手が意味を勘違いして大問題になることも考えられます。

一方詩などは、常用漢字表で使用できない「解る」「判る」を含めて全てOKですので安心してください。

例えば詩・小説・私的なメールなどでは、厳密に意味を踏まえて表現したい場合があります。そんなときこそ、「分かる」「解る」「判る」を使い分けるのがよいでしょう。

なお使い分けが難しい場合には、「解る」の表現を「解明」や「理解」に言い換えてみる。「判る」なら、「判別」「判明」に言い換えてみると、しっくり感じることがあります。これなら相手にも意味が明確に伝わるでしょう。

最後の最後、どうしても使い分けが難しい場合には、「分かる」または「わかる」を使うことをお勧めします。

まとめ

これまで「分かる」「解る」「判る」の意味について見てきました。最後にポイントを確認してください。

「分かる」の意味は、
①1つのものが別々になる。区分される。
②物事の意味、内容、事情、区別などが了解される。
③立場、気持、事情などを察してさばけた気持を持つ。
④事実などがはっきりする。判明する。

「解る」の意味は、②③と共通
「判る」の意味は、④と共通

以上のように国語辞典には「分かる」「解る」「判る」が存在しますが、常用漢字表に存在するのは「分かる」だけ、「解る」と「判る」は存在しません。

では「分かる」「解る」「判る」の使い分けは、一般的には常用漢字表を意識して「分かる」を用い、詩などを書くときは「解る」「判る」も含めて使い分けるとよいでしょう。






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