私は10年近く前に、喪主として葬儀を3度執り行ったので、葬儀(弔事)の作法(マナー)をある程度身につけることができました。
なぜかその頃から、告別式やお通夜に行く機会がぐ~んと増えました。
その会場で会った喪主さんの多くは、喪主経験は初めてで、1年間は知らない事や分からない事で大変みたいでした。
ということで、初めて喪主になった方の顔を見ていたら、大変さを労う気持ちもあって、こんな独り言を言ってしまいました。
『「喪中だから、1年間は神社へ参拝に行けない」と思っている人が結構いるけれど、この喪主さんは神社参拝どうするのかな?』
と言う私自身が、喪中の最中に神社参拝してしまったこともあり、聞いてみたかったのです。
参拝したのが良かったのか、悪かったのか。気になりませんか?
結論は、第1章のはじめに書きました。続いて理由・対処法も紹介しましたので、記載順にご覧ください。
なお私は10年以上前に、氏神様の氏子総代を務めた経験があるので、具体例も交えてお伝えしますね。
目次
喪中期間に神社参拝したのは大丈夫?
ズバリ結論からお伝えします。結論は2つ!
- 喪中でも忌明け後の参拝はOK
- 喪中でも忌中期間は参拝できません
喪中(※注1参照)の初期を、忌中(※注2参照)と言いますが、
忌(=忌中)明け後という条件付きですが、喪中に神社参拝するのは問題ありません。
一方、喪中でも忌中期間は、残念ながら参拝できません。
このあとは、忌明け後参拝OKの理由と忌中参拝NGの理由を見ていきましょう。
※注1:喪中
悲しみを徐々に癒し、通常の生活状態へ戻すための期間をいいます。
期間は地域に慣例がある場合、それに従うのが適切です。慣例がない場合は、忌中期間も含めた1年間とするのが一般的です。
※注2:忌中
神道では、故人の祈りに専念し、死の穢れが他の人に伝染しないよう、外部との接触を避け行動を慎んでいる期間をいいます。
また神社の神様は死の穢れを忌み嫌うので、穢れを背負った忌中期間の神社参拝はよくないと考えられています。
期間は、地域に慣例がある場合はそれに従うのが適切です。特に慣例がない場合は、仏教(一部の宗派を除く)では49日間、神道では50日間です。
なお、49日または50日を過ぎることを忌明けといいます。
→ 神社本庁 服忌
喪中でも忌明け後は、参拝がOKの理由
忌明け後の参拝がOKの理由は…
- 忌明け後は穢れ(けがれ)が無くなるから
忌中の間、神聖な神社の神様は死の穢れを忌み嫌うので、参拝できませんが、忌明け後になると穢れがなくなるので、参拝はOKです。
世間には「喪中の1年間は、神社へ参拝に行けない」と思っている人がいますが、「喪中でも忌明け後の参拝はOK」ですから、後々のために覚えておくとよいでしょう。
私自身の体験ですが、忌明け後必要があり神社参拝したことがあります。「忌明け後の参拝はOK」を知っていたので、迷うことはありませんでした。
喪中でも忌中期間は、参拝ができない理由
ズバリ、参拝ができない理由は…
- 神社の神様は死による穢れを特に忌み嫌うから
平常時、神社参拝者の多くは、日常生活で付着した穢れを手水舎で清めてから、神様の前でお参りします。
しかしながら弔事となると、死の穢れ(けがれ)は気枯れ(けがれ)とも言われ、気が枯れて気力・生命力が極度に落ち込んだ状態では、神社の神様は歓迎しません。
そこで気力を回復させるためには、一定期間が必要とされ、「穢れ(気枯れ)を祓う期間=忌中」と定めて、神社参拝を禁止にしたのですね。
忌中期間の参拝はNG、3つの対処法
前章の最後「喪中でも忌中期間は、参拝ができない理由」はよく分かりましたか。
では、参拝がNGの場合の対処法を3つご紹介しましょう。
- 参拝後お祓いしていただき、死の穢れを清める
- 忌明け後おわびの参拝をする
- お寺参拝なら喪中も忌中(通常49日間)も問題なし
参拝後お祓いしていただき、死の穢れを清める
忌中期間に神社参拝してしまったと気がついたら、まずこの対処法をお勧めします。
- 神主さんにお祓いしていただき、死の穢れを清める
参拝したあとで気がついたら、神主(宮司)さんに相談してみてください。事情を話せば、お祓いしていただけるかもしれません。
かつて、私が氏子総代をしていた時の同僚の体験談をお話します。
ある祭事の数日前に同僚の身内に不幸があり、忌中のためこのままだと同僚は祭事に出席できません。
そこで祭事の直前に、宮司さんにお願いして鳥居の外でお祓いしてもらい、穢れを清めることができました。
相談した後、祭事に参列することができたわけですね。
一方、お勧めしている対処法は、忌中に神社参拝してからの相談になるので、どうなるか何とも言えません。でも神社によってはお祓いしてくれるかもしれませんよ。
忌明け後おわびの参拝をする
2つ目の対処法は…
- 忌明け後、おわびを兼ねて参拝する
忌中期間に神社参拝してしまったとしても、それはそれで仕方ないことです。
気になるのは、参拝した方の心と体の具合です。
そもそも忌中期間は、死の穢れにより気持ちが枯れて、気力も体力が著しく衰えています。
心身とも何ともなかったら、そのままお帰りください。
忌明け後には穢れがとれ、元気を取り戻せているはずですので、おわびを兼ねて参拝されるとよいでしょう。
お寺参拝なら喪中も忌中も問題なし
3つ目の対処法は…
- 喪中も忌中も、お寺への参拝は問題はありません
神道では死は穢れですが、仏教では死は穢れとは考えていないため、喪中でも忌中でも参拝できます。
神棚参拝も、忌中期間は控えるべき
忌中のときは、神棚についても気を配る必要があります。
- 忌中の間は神棚封じをして、死の穢れから神様を遠ざける
神棚のお札には神様が宿っているので、お神札(おふだ)と書くようですが、神棚は家族を守る小さな神社なんですね。
第1章以降説明してきましたが、忌中の時は神社参拝を控えます。神棚も神社ですから、50日間はお参りできなくなります。
ではどうするか。それが神棚封じなんです。手順は下記の通りです。
1. 神棚の前で、亡くなった家族の名前を報告
2. お供え物や榊を下げる
3. 神棚の扉を閉じる
4. 神棚の正面に白い半紙を貼り付ける
これで神棚封じは完了です。忌明けまで、お供えや参拝(拝礼)は控えましょう。
まとめ
「喪中だから、1年間神社に行けない」と思っていた方!
喪中でも忌明け後は穢れがとれるので、神社でお参りできますよ。
特に、喪中と忌中の違い、穢れと神社参拝についての神道の考え方、ご理解いただけたことと思います。
最後に、「穢れ」と「忌中」について少し補足しておきます。
穢れは、決して「汚れ」「不潔」なことではなく、気枯れ(けがれ)、気が枯れて気力も体力も弱体化している状態です。
忌中とは、穢れが伝染しないよう行動を慎しみ、神聖な場所である神社へ穢れを持ち込むことを禁止し、生命力回復を願い気枯れを落とす期間です。