筆者は会社で営業を担当していますので、会社を代表する方から名刺をいただく機会が度々あります。

そこには「代表取締役」「代表取締役会長」「代表取締役社長」「取締役社長」などと記載されています。

社長室で笑顔を見せる代表取締役社長
この中で、本当に会社を代表する役職は「代表取締役」と「社長」のどちらなのでしょうか?

その違いは、会社法と会社独自が関係しているようですね。

ではこれから、「代表取締役」とは、「社長」とは、そして両者の違いなどについてご一緒に見ていきましょう。


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「代表取締役」とは

「代表取締役」は会社法による役職

まず「代表取締役」の意味を一言で表現します。

  • 「代表取締役」は、会社法で定められた役職です。

ですから「代表取締役」を語る場合、会社法がとても大事になります。

その会社法第349条1項と4項の規定にあるとおり、
「代表取締役」は、「取締役」の中から選ばれる法律上の代表者であるため、最高責任者として株式会社の業務に関する一切の権限を有しています。


第三百四十九条 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
4項 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
(引用元:e-Gov法令検索)


また「代表取締役」の任務としては、対外的に会社の代表として契約・融資などを行ないます。人数は最低1名ですが、複数名存在する場合もあります。

「代表取締役」の登記事項は氏名と住所

「代表取締役」と「取締役」はともに、法律上の役職ですので選任されたら登記が必要です。

ただ「取締役」の登記事項は氏名だけですが、法律上の代表である「代表取締役」は、取引相手を保護し無用の混乱を防ぐため、氏名だけでなく住所も登記必須とされています。

ですから「代表取締役」が引越しなどで住所変更したときは、2週間以内に変更登記が必要です。

なお、登記事項は商業登記簿の役員欄に記載されますので有料ですが誰でも閲覧できます。

「代表取締役」の住所は、なぜ記載必須なの?

ではなぜ、登記簿上「代表取締役」の住所が、必須事項なのでしょうか。

答えは、法律上の代表者としての責任の重さにあります。

例えば予期せずして、契約先の「代表取締役」が音信不通になってしまい、連絡がとれません。

このような場合、その会社の登記簿の役員欄を調べ「代表取締役」の住所を確認し、内容証明を郵送するなどの対応を取ることになるでしょう。

この一例だけで「代表取締役」の代表者としての存在の重さや責任の重大さが分かりますね。

会社の実印は代表者印、印鑑登録も必須!

「代表取締役」の登記は大切なことですが、同じく会社の実印となる「代表取締役」の印鑑登録も大切、いや必須です。

重要な契約を交わす場合、署名する「代表取締役」と押印する「代表取締役」が同一であることを確かめるため、実印による押印を求めることがあります。

その点公的に認められた実印の場合、契約書と印鑑証明書を比較すれば同一人物(本人)ということが一目瞭然に分かり、実印による押印を求める立場としても安心して署名捺印できます。




「社長」とは

「社長」は会社独自で定めた役職

つぎは「社長」の意味を一言で表現します。

  • 「社長」は、会社が独自に定めている役職です。

いわゆる専務・部長・課長などは会社独自の役職ですが、それぞれ社内での権限と任務があります。

同じように「社長」にも、社内に対する最高責任者として権限を有し、社内業務を執行する任務があります。

なお「社長」は、会社の長であるため、通常1つの会社に1名だけ存在します。

※ご参考として...「社長」の人数について特別の事情ある会社が日本に2社存在します。
その内の1社、東証一部上場の株式会社IDOMは代表取締役社長二名体制。代表取締役社長 羽鳥 由宇介氏、代表取締役社長 羽鳥 貴夫氏。

「代表取締役」と「社長」の違い

「代表取締役」と「社長」の違いは大別して2つあります。

①「代表取締役」は会社法、「社長」は会社独自
②「代表取締役」は必須で1名以上、「社長」は任意

「代表取締役」は会社法、「社長」は会社独自

まず「代表取締役」と「社長」の意味を再掲します。

  • 「代表取締役」は、会社法で定められた役職
  • 「社長」は、会社が独自に定めている役職

一目瞭然、「代表取締役」と「社長」の違いのポイントは、決め方が会社法か会社独自かでしょう。

まず「代表取締役」は、法律上の代表者であるため、対外的に会社の代表として契約・融資などを行ないます。代表者であることを一般に公示するため、選任されたら法務局に登記する必要があります。

また会社との契約関係を見ると、「代表取締役」を含め「取締役」と会社とは委任契約の関係となりますので、辞める時は辞任届を提出します。後日役員変更の登記申請する際、辞任届が必要となります。

一方「社長」は、社内に対する最高責任者です。「代表取締役」が契約を締結させた案件を、社内業務として執行する任務があります。もちろん、会社独自の役職ですので登記不要です。

また会社との契約関係ですが、「取締役」や「代表取締役」ではない「社長」の契約形態は、一般社員と同じです。会社とは雇用契約での就任となりますので、「社長」を辞める際の辞任届は不要です。

「代表取締役」は必須で1名以上、「社長」は任意

  • 「代表取締役」は、1名以上
  • 「社長」は、通常は1名だけ存在

まず会社法で定められた「代表取締役」は、株式会社においては必須の機関です。よって最低1名は存在します。

上限はないため、大きな会社ほど「代表取締役」や「代表取締役○○」の人数が多くなる傾向がありますね。

例えば「代表取締役社長」と「代表取締役専務」のように「代表取締役」が2名いれば、前者が不在になっても、後者が存在するので滞りなく業務が執行できます。

一方、「社長」は、会社の長であるため、通常は1名存在します。

ただ「社長」は会社が独自に定める役職ですので、必要なければ会社に「社長」が存在しないこともあります。

現実に中小・零細企業の中には、「社長」のいない会社も存在します!次をご覧ください。

「代表取締役」はいるけど「社長」不在の会社がある

特に中小企業において、法律上の「代表取締役」は1名いるけど、「社長」がいない会社が存在します。この逆は違法ですが、法令順守している立派な会社です。

つまり、名刺表示では「代表取締役」ですが、社内の最高責任者として社内業務も執行しているのです。一人二役ですね。実態は「代表取締役社長」なのです。

その証拠に、社内外から「代表取締役」ではなく「社長」と呼ばれていますから。納得ですね。そんな中小企業の「社長」は、筆者の身近にたくさんいます。

まとめ

本文では「代表取締役」は、「社長」以外の人が務めるイメージで説明してきましたが、実際は同じの人が両方を務めるケースの方が多くありますのでお伝えしておきます。

最後に「代表取締役」と「社長」の違いについて再確認しましょう。

「代表取締役」と「社長」の違いは...
・「代表取締役」は、会社法で定められた役職
社外に対する最高責任者でもあるため、対外的に会社の代表として契約・融資などを行ないます。

・「社長」は、会社が独自に定めている役職
社内に対する最高責任者ですので、社内業務を執行する任務があります。

「代表取締役」と「社長」の違いは、以上のように整理してみるとスッキリします。







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