「鑑賞」と「観賞」は、どちらも「かんしょう」と音読みし、意味もよく似ています。
とても気になる「鑑賞」と「観賞」の意味の違いは、芸術的価値を感じるかで明確に区別できます。
でも中には、庭園や映画など使い分けが難しい言葉も存在します。詳しく解説しましたのでご覧ください。
では、「鑑賞」と「観賞」の意味の違いを中心に、それぞれの意味と使い方を見ていきましょう。
目次
「鑑賞」と「観賞」の意味の違い
「鑑賞」と「観賞」は、意味が似ている同音異語です。
◆「鑑賞」:芸術作品などの価値を理解し楽しむこと
◆「観賞」:物を見て楽しむこと
その違いを見ていきましょう。
- 「鑑賞」と「観賞」の意味の違いは、「芸術的価値を楽しむ」か「物を見て楽しむ」か。
一言でいえば、芸術的価値を感じるか感じないかです。
例えば「鑑賞」は、映画・絵画・彫刻など芸術作品に対して、「映画の鑑賞会」「絵画を鑑賞する」のように用いて、その芸術的価値を楽しみます。
一方「観賞」は、動植物や景色など自然に存在する人工的でない物に対して、「つつじを観賞する」のように用いて、その美しさを楽しみます。
「鑑賞」の意味は、芸術作品を味わい楽しむ
「鑑賞」の意味を国語辞典で調べます。
「鑑賞」:芸術作品などに接して、その芸術的価値を理解し味わって楽しむこと
(引用元:旺文社国語辞典)
上記のように、「鑑賞」とは、芸術作品などの芸術的価値を理解し味わって楽しむこと。「名画を鑑賞する」「名曲を鑑賞する」のように用います。
ではなぜ「鑑賞」は、芸術作品に限るのでしょうか。
その「鑑賞」の「鑑」には、「鑑定」「鑑識」などと用いられるように「よく考えて善悪や真偽を見分ける」という意味があります。「賞」は「味わって楽しむ」ことの意味。
よって「鑑賞」の意味は、人為の加わった芸術的なもの、即ち「芸術作品の良さを理解し」「味わって楽しむ」こと、に他なりません。「芸術作品=鑑賞」なのですね。
ここで、キーワード・芸術の定義を明確にしておきましょう。デジタル大辞泉の説明が参考になります。
芸術:特定の材料・様式などによって美を追求・表現しようとする人間の活動。および、その所産。絵画・彫刻・建築などの空間芸術、音楽・文学などの時間芸術、演劇・映画・舞踊・オペラなどの総合芸術など。
(引用元:Weblio辞書(デジタル大辞泉))
ご覧のように芸術とは、絵画・彫刻・建築・音楽・文学・演劇・映画・舞踊・オペラなどを定義しています。
「観賞」の意味は、物を見て楽しむ
一方「観賞」の意味も国語辞典で確認します。
「観賞」:物を見て、ほめ味わいながら楽しむこと
(引用元:学研現代新国語辞典)
「観賞」とは、風景や動植物などを見て楽しむ場合に使います。「夜景を観賞する」「満開の桜を観賞する」「観賞魚は見飽きない」のように用いられます。
ではなぜ「観賞」の対象が、風景や動植物なのでしょうか。
そもそも「観賞」の「観」には、「観察」「観光」などと用いられるように「よく見る」「全体を一望に見渡す」という意味があります。
よって「観賞」の意味は、風景や動植物などの「物をよく見て」「味わいながら楽しむ」こと、に他なりません。「風景や動植物=観賞」なのですね。
特に「観賞魚」として派手な色彩がある金魚・錦鯉・熱帯魚などは、見飽きません。何時間でも「観賞」し続けたいですよね。
「鑑賞」と「観賞」の使い分け方は2種類
「鑑賞」と「観賞」の使い分け方法は2種類存在します。
- 対象物の種類で「鑑賞」と「観賞」を使い分ける
- 庭園などは、見る人の感じ方で使い分ける
対象物の種類で「鑑賞」と「観賞」を使い分ける
まず一般的な使い分け方をご紹介します。
対象物の種類が「芸術作品」か否かで、「芸術作品=鑑賞」・「芸術作品以外=観賞」のように使い分けます。
具体的には、対象物の種類が芸術作品(名曲など)は、「名曲を鑑賞する」「コンサートを鑑賞する」「演劇を鑑賞する」などと用いて、芸術的価値や美しさを理解し味わいながら楽しみます。
一方、対象物の種類が芸術作品以外(山水など)は、「山水を観賞する」「季節の花を観賞する」「熱帯魚を観賞する」などと使い分け、人為の加わらない自然や風景、動植物などを眺めて楽しみます。
庭園などは、見る人の感じ方で使い分ける
ところで庭園は、建築物の一種で人工的に草木・川・池などを配した庭で、もちろん芸術作品です。
しかし「庭園かんしょう」の漢字表記がゆれているため、「鑑賞」だけでなく「観賞」も用いられます。庭園の場合は、見る人の感じ方で「鑑賞」と「観賞」を使い分けるとよいでしょう。
- 芸術的な価値を理解できる人は「庭園を鑑賞する」
- 庭園も景色と同じ感覚で眺める人は「庭園を観賞する」
まず前者のように、人為が加わり美しく整備された庭園に芸術作品としての価値を感じる人は、「庭園を鑑賞する」と表記します。
でも後者のように、自然の景色と同じように庭園を眺める人もいます。庭園に芸術的価値を感じ取れない人は、「庭園を観賞する」の表記を使うとよいでしょう。
映画・テレビ・花火も、見る人の感じ方で分ける
なお映画は、8番目または9番目の芸術と呼ばれ、間違いなく芸術作品です。
ところが、庭園と同じように「映画観賞・映画鑑賞」と二様に表記がゆれています。
映画は、「映画観賞・映画鑑賞」などの二様の表記が行われたりする。これは芸術の認定をめぐって表記がゆれている例である。これを誤りとすることはできない。
(引用元:学研現代新国語辞典)
引用例にある「映画観賞」・「映画鑑賞」の表記ゆれの理由は、芸術認定の違いによるものですので、見る人の感じ方で使い分けるとよいでしょう。
なお筆者の調査結果によると、テレビや花火も二つに表記がゆれているのが実情です。これも見る人の主観で使い分けるとよいでしょう。どちらかの表記を選択しても、相手は違和感を感じることはないでしょう。
まとめ
これまで「鑑賞」と「観賞」の意味の違いと使い分け方について見てきましたが、ポイントをまとめましょう。
「鑑賞」と「観賞」の意味の違いは、「芸術的価値を楽しむ」か「物を見て楽しむ」か。
「鑑賞」:芸術作品などに接して、その芸術的価値を理解し味わって楽しむこと
「観賞」:物を見て、ほめ味わいながら楽しむこと
「鑑賞」と「観賞」の使い分け方は2種類
・対象物の種類で「鑑賞」と「観賞」を使い分ける
・かんしょう者の感じ方で「鑑賞」と「観賞」を使い分ける