「英断」は、日常生活ではあまり使われませんが、テレビや新聞でたまに報道される言葉です。
例えば国民の関心あるテーマについて、政府首脳や企業の社長などが「英断を下した」とか「大英断」などと報道されます。
企業の責任者などが下す「英断」とは、どのような意味と重みのある言葉なのでしょうか?
ではこれから「英断」とは何か?意味を中心に使い方・類語など、用例や文例を交えながら分かり易く解説します。
目次
「英断」とは
「英断」の意味
まず国語辞典による「英断」の意味から見ていきます。
「英断」:すぐれた判断に基づき、思い切りよく事を決めること。すぐれた決断。
(引用元:旺文社国語辞典)
「英断」の「英」は、「英雄」の言葉でも使われ「優れている」「ひいでた者」の意味を持ちます。「断」は、「決断」の言葉でも使われ「ずばりと決める」の意味を持ちます。
つまり二字熟語「英断」には、「思い切りよく事を決めること」および「すぐれた決断」という2つの意味合いがあることが分かります。
また「英断」は、おおかた「特に重大な事態を迎えた場合など、退路を断つほどの覚悟を持って、普通の人にはなし得ないような思いきったすぐれた決断。」といったニュアンスで用いられます。
その用例として、「英断を下す」「大英断」などという言い回しがよく使われます。
文例として「会社の重大局面の際、社長がひるむことなく英断を下したおかげで、会社はよみがえることができた。」という多くの社員の喜びの声には、「社長が退路を断つほどの思い切った覚悟を持って大英断を下し、V字回復させることができた。社長に感謝したい。」というニュアンスが込められています。
このように、「英断を下す」とみんなから賞賛されますが、なぜでしょう?
日常でも、必要なときはきっぱりと「決断」を下しますが、特に重大な事態を迎えた場合は、単なる「決断」では役に立たない。「思い切った決断」と「優れた決断」の双方が求められます。それが「英断」。
重大な局面を迎えた企業において、社長がひるむことなく、一歩もひけないという思い切った覚悟を持って、誰にも成し得ない「英断を下す」姿を見たからこそ、多くの社員が感動と感謝の言葉を送るのですね。
「英断」の使い方と例文
「英断」の使い方
「英断」は名詞です。名詞的用法で用いられます。
「英断する」のようなサ変動詞が存在しないため動詞的用法は不可能ですが、格助詞の「を」に他動詞を伴って「英断を下す」「英断を仰ぐ」のような言い回しが使用できます。
ほかの名詞的用法としては、「英断だ」「大英断」「ご英断」のように使われます。最後の「ご英断」は、「英断」に接頭語の「ご」を付け尊敬の意を表します。
「英断を下す」の例文
「下す」は、はっきりとした判断をするときに告げる語で、「英断を下す」のように用いられます。
「英断だ」の例文
「英断」に助動詞の「だ」を付けて「英断だ」と断定する場合に多く見られます。力強い表現の「英断」+断定の「だ」ですから、「英断」がより強い意味に感じますね。
「大英断」の例文
「大英断」の意味は、重要な決定をする際に下される非常にすぐれた決断です。テレビ局も激動・激変の時代を迎え、「大英断」を下さざるをえない状況なのでしょう。
なお「決断」と「英断」と「大英断」の関係は、包含関係が成り立ちます。「決断」⊃「英断(優れた決断)」⊃「大英断(非常に優れた決断)」
「ご英断」の例文
誰にも成しえない「英断」を下した方に対して「ご英断に~」のような敬語表現を使い、尊敬と賞賛の言葉を送ります。
・ご英断に敬意を表します。
・ご英断に心より拍手をおくります。
「英断」の類語
「英断」と「勇断」「即断」「速断」の違い
「英断」の類語「勇断」「即断」「速断」との違いを通じて、「英断」の意味を深めていきます。
下記のように「英断」「勇断」「即断」「速断」は、すべて「決断すること」という基本的に同じ意味を持ちます。
・「英断」:「すぐれた判断に基づき、思い切りよく決断すること」
・「勇断」:「勇気を出して決断すること」
・「即断」:「その場で決断すること」
・「速断」:「速やかに決断すること」
4つの熟語の違いは、決断する方法です。
・「英断」の場合、「すぐれた判断に基づき、思い切りよく」
・「勇断」の場合、「勇気を出して」
・「即断」の場合、「その場で」
・「速断」の場合、「速やかに」
なお「英断」はよく使われている語ですが、「勇断」「即断」「速断」は日頃使う場面が多いとはいえません。
そこで、ほぼ文字通りの意味で覚えやすく、微妙なニュアンスの違いも相手に伝わりやすい「勇断」「即断」「速断」は、話し言葉ではなくメールなど書き言葉として用いるとよいでしょう。
「英断」と類語「決断」の違い
「決断」の意味は「きっぱりと決めること」。他方「英断」は「思い切って決めること」「優れた決断」。どちらも「きっぱりと決めること」で同じです。
違いは、日常的か、重大・緊急事態か。「決断」は、日常的に行なうこと。「英断」は、重大な事態や緊急事態発生時に行なうこと。
例えば「決断」とは辛く苦しいものですが、日常であっても必要なときは覚悟を持って「決断」することが求められます。
一方、重大な事態を迎えた場合には、「決断」ではなく、「英断(優れた決断+思い切った決断)」が求められます。
なお「英断」は「勇断」などとともに、「決断」の一種で「決断」の中(枠内)に含まれます。包含関係は、「英断」⊂「決断」となります。
※「決断」の意味などを紹介した別記事もありますので、合わせてご覧ください。
→ 「決断」とは?意味を中心に類語や使い方を詳しく解説
まとめ
「英断」とは、「すぐれた判断に基づき、思い切りよく事を決めること。すぐれた決断」。
「決断」すべきときは「決断」が求められますが、特に重大な事態を迎えたら「決断」ではなく「優れた決断」、つまり「英断」が求められるのですね。