「見識」は、どちらかというとビジネスシーンで使われる言葉です。

「見識」には意味が2つ存在し、かなり深い意味が含まれているので、「見識」の意味をよく理解している人は少ないことでしょう。

「見識のある人」「見識が高い」「高い見識」「見識を広げる」などのように用いますが、それぞれの意味分かりますか。

では「見識」とは何か?意味を中心に、類語・使い方など、用例・文例を交えながら解説します。


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「見識」とは

「見識」の意味

国語辞典による「見識」の意味から見ていきます。

「見識(ケンシキ)」:
①物事を深く見通し、本質をとらえる、すぐれた判断力。ある物事に対する確かな考えや意見。識見。
②気位。みえ。

(引用元:大辞泉)


「見識」には意味が2つ存在します。

「見識」の意味①

「見識」の1つ目の意味は、「物事を深く見通し、本質をとらえる、すぐれた判断力。ある物事に対する確かな考えや意見。識見。」です。

「見識」の「見」は、「見解」「意見」でも使われ「見方」「考え」の意味を持ち、「識」は「認識」でも使われ「物事の本質を見抜く能力」「物事の是非・善悪の見わけ方」の意味を持ちます。

つまり二字熟語「見識」には、「物事を深く見通し本質を見抜く、すぐれた判断力」「物事に対する確かな考えや見方」という意味合いがあることが分かります。

また「見識」は、おおかた「物事を奥底まで見通し、本質を見抜いてしまうすぐれた判断力」と「物事の本質を見通し、その是非や善悪を見わけてしまう確かな考えや意見」といったニュアンスで用いられます。

その用例として、「見識のある人」「見識を備えた人物」などという言い回しがよく使われます。

文例として「当社の社長は、高い見識を備えた人物です。」という一役員の評価には、「社長は物事の本質を鋭く見抜けるだけでなく、確かな考えをお持ちの方です。」というニュアンスが込められています。

「見識」の意味②

「見識」には、「気位。みえ。」という2つ目の意味があります。

「見識」は、「見識が高い」という言い回しを用いることにより、「気位」や「みえ」という意味合いになります。

この「見識」は、多くの場合「自分の品位を誇り、それを目だたせようとする気持ち」といったニュアンスで用いられます。

文例として「専務は誰よりも見識が高い人だから、気をつけて付き合う方がいい。」というある人の感想には、「専務は誰よりも見識が高く、気高さや上品さが誰よりもすぐれていると自慢する人だから、気をつけた方がいい。」というニュアンスが込められています。

なお、見識」の意味「気位、みえ」は、意味①とは異なり、日本で成立し日本固有のものです。従って多くの国語辞典には掲載されていますが、漢和辞典の中には掲載されていないものも存在します。

「見識」の文法と使い方

「見識」は名詞ですので、名詞的用法として用いられます。

名詞的用法として「見識を備えた人」「見識が高い」「ご見識」のように用いられます。

最後の「ご見識」は、「見識」に接頭語の「ご」を付けた尊敬の意を表します。「ご見識をお伺ういします。」のように用います。

なお、「見識する」のようなサ変動詞的な用法では用いられていません。

「見識」の使い方(例文)は第3章をご覧ください。




「見識」の類語

「見識」の類語はたくさん存在しますが、意味が類似している「意見」「考察」「良識」との違いを通じて、「見識」の意味を深めていきます。

「見識」と類語「意見」の違い

「見識」は、「物事に対する確かな考え」。「意見」は「ある問題についての個人の考え」という意味です。ともに「見」の文字があるように「考え」ということでは同義です。

違いは、考えの内容。「見識」は「識」の文字があるように、物事の本質を見通す確かな考えです。一方「意見」は「意」の文字があるように、心の中で思い巡らした個人的な考えです。

「見識」と類語「考察」の違い

「見識」は「物事の本質を見通す、確かな考え」。「考察」は「物事の本質を明らかにするため、よく調べて考えること」。ともに、物事の本質を見通すことでは同じ意味です。

違いは、物事の本質を見通すことが、根拠なのか目的なのか。「見識」は根拠、「考察」は目的です。

「見識」は、確かな考えを持つための根拠として、物事の本質を見通す判断力が必要になります。一方「考察」は、目的として物事の本質を明らかにするため、客観的なデータなどを調べて考えます。

「見識」と類語「良識」の違い

「見識」の意味は、「物事の本質を見通すすぐれた判断力」「本質を見通す確かな考え」。

一方「良識」は、「社会人として、物事の善悪による健全な判断力」「すぐれた見識」で、ともにすぐれた判断力や考えです。

違いは、判断力の差。「良識」は、一般の社会人が持つ健全な判断力。「見識」は、物事の本質を見極める最高の判断力ですから「良識」とは比べ物になりません。

なお「良識」の意味などを紹介した別記事も合わせてご覧ください。
→ 「良識」とは?意味を中心に使い方や類語を詳しく解説

「見識」の使い方(例文)

「見識」は、名詞として用います。

「見識を備えた人」

物事の本質を見通す、確かな考えを持った人のことを「見識を備えた人」と言います。また「見識のある人」や「見識をもつ人」も同様の方々です。

・彼は愛想がよく見識も備えた人で、皆から慕われています。

「見識を広げる」「見識を深める」など

「見識」の直後に、助詞の「を」と動詞を伴って、「見識を広げる」「見識を深める」「見識を広める」「見識を持つ」「見識を問う」のような言い回しがよく使われます。

意味は全て文字通りですが、少し解説すると、「見識を広げる」は、見識の幅を広げること。「見識を深める」は、特定の物事に対する見識をさらに深めることです。

・見識を広げる方法は、様々な人と話すことである。
・見識を深める方法は人それぞれである。

「高い見識をもつ」「見識が高い」

「高い見識を持った方」と言うと「しっかりした考えをお持ちの方」で、立派な方なんだという良いイメージを与えます。

ところが「見識が高い方」と言うと、第1章で説明した「気位」「みえ」という意味合いに変わりますので、受ける印象はあまり良くないですね。

「高い見識をもつ」と「見識が高い」を比較しながら、「見識」の意味の違いをご確認ください。

・彼は「高い見識」をお持ちの方なので、どんな質問にも答えることができます。
・彼はとても「見識が高い」方だから、批判や助言はしない方が無難です。

まとめ

「見識」とは何か?意味を中心に、類語・使い方などをご一緒に見てきました。

「見識」の意味は、物事の本質をとらえるすぐれた判断力。物事に対する確かな考えや意見。

確かに深い意味でしたが、2つ目の意味として、気位・みえの存在にはちょっとびっくりしました。

最後に「見識が高い」は、気位やみえの意味です。「あなたは高い見識をお持ちです」と敬意を表して言うところを、「あなたは見識が高いです」と言ったら万事休す。間違えて使用しないようご注意ください。






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