「ご愁傷様です」は、遺族に対するお悔やみの言葉として、話し言葉でよく使われています。
では「ご愁傷様です」と言われたら、遺族の立場でどう返したら良いのでしょう?
筆者自身は、遺族や会葬者として葬儀に参列した経験が多く、また喪主としての経験も3度ありますので、ずっと遺族としての挨拶を見ることができました。
過去の遺族の方々の「ご愁傷様です」への返し方を思い出してみると、「ご愁傷様です」の意味がよく分からない為なのか、具体的な言い方が分からないという方(特に若い方)が多かったですね。
そこで、「ご愁傷様です」の意味を確認していただいた上で、それに対する代表的な返し方を詳しく記事にしました。
また葬儀は守らなければいけない挨拶マナーも沢山ありますので、併せてご覧ください。
目次
「ご愁傷様です」の意味
「ご愁傷様です」と言われた時の返事の仕方を知りたいのですが、その前提として「ご愁傷様です」の意味を知ることから始めましょう。
「ご愁傷様です」の「愁」は「嘆き悲しむ」、「傷」の意味は「体や心の痛み」。2語熟語としての「愁傷」の意味は、「心の傷を嘆き悲しむこと」です。
また、「愁傷」に敬意表現の「御(ご)~様」と丁寧形「です」が付加された「ご愁傷様です」の意味は、「遺族の心の痛みを心配し、嘆き悲んでいます」。この表現は、お悔やみの言葉として話し言葉で用いられています。
「ご愁傷様です」への返事の仕方・文例
「ご愁傷様です」へのお返しは御礼
では「ご愁傷様です」とお悔やみの言葉を言われた時、遺族の立場で何をお返ししたらよいのでしょうか?
「ご愁傷様です」には「遺族の心痛を思いやる言葉」という意味がありますので、そう言われたら感謝の言葉(=御礼)を返すのが正解です。
それでは「ご愁傷様です」への返事の仕方として、代表的な感謝の言葉(=御礼)を5文例ご紹介します。
5つの文には、感謝の気持ちが敬語(丁寧語)で具体的に言い表されています。この敬語表現はそのまま変えないでご使用ください。
- ありがとうございます
- 恐れ入ります
- 痛み入ります
- 申し訳ございません
- 生前はお世話になりました
ありがとうございます
「ご愁傷様です」への返事として、「○○ありがとうございます」が最も一般的に使われる表現で、地位や性別などに関わらず誰が使用しても問題ありません。
具体的には「○○」の部分を、「ご丁寧に」「お心遣い」「お気遣い」に置き換えて使用します。
・ご丁寧にありがとうございます
・お心遣いありがとうございます
・お気遣いありがとうございます
なお単に「ありがとうございます」だけの表現は唐突な感じを与えますので、上記のような違和感のない表現で挨拶すると良いでしょう。
恐れ入ります
「恐れ入ります」の意味は、相手の好意などに対して、ありがたいと思うこと。恐縮すること。
「ご愁傷様です」への返事として「恐れ入ります」だけでも不自然な表現ではありませんが、直前に「ご丁寧に」「お心遣い」「お気遣い」などの言葉を添えるとベターです。
・ご丁寧に恐れ入ります
・お心遣い恐れ入ります
・お気遣い恐れ入ります
例えば、遺族側から「ご丁寧に恐れ入ります」と言われた弔問客は、自分は殊のほか感謝されていると感じることでしょう。
ですから、「○○恐れ入ります」とお返しする相手は、上司や年配者などの目上の方に多く使用されます。
痛み入ります
「痛み入ります」の意味は、相手の手厚い配慮・好意などに対して、深く感じいること。恐縮すること。
意味は「恐れ入ります」とほぼ同じですが、どちらかと言うと古風な言い方と考えられているため、使用される頻度は「恐れ入ります」より稀と言えます。
表現として「痛み入ります」だけでは唐突な感じを与えますので、その前に「お心遣い」や「お気遣い」をつけた方が、お悔やみの挨拶としては自然に感じられます。
・お心遣い痛み入ります
・お気遣い痛み入ります
申し訳ございません
「申し訳ございません」の意味は、言い訳のしようがないこと。恐縮と同じ意味です。
「申し訳ございません」も単独で用いることは少なく、下記の文例のように前に言葉を添えることが多いです。
・ご迷惑をおかけして、申し訳ございません
・ご心配かけて、申し訳ございません
・少し落ち着きました、申し訳ございません
下記はよくある挨拶の具体例です。忌引き休暇を取得して数日間お休みをいただき、会社へ復帰後の挨拶の会話です。
「この度はご愁傷様でした」と上司からお悔みの言葉があり、「ご迷惑をおかけして、申し訳ございません」と御礼の返事をします。
なお返事の相手としては、会社の上司や年配者など、時期は葬儀中や葬儀後に多く使われます。
生前はお世話になりました
今まで解説してきた「ありがとうございます」や「恐れ入ります」などは、「ご愁傷様です」への返事に対する遺族としての第一声です。
一方「生前はお世話になりました」は、故人と特に親しかった方に対して、遺族が故人に成り代わり御礼の気持ちを伝えます。
次の文例のように、直前に一般的なお礼を述べてから、「生前はお世話になりました」と述べているので、より感謝の気持ちが伝わります。
・ご丁寧にありがとうございます。生前は、父が大変お世話になりました。
「ご愁傷様です」への返事はマナー守って
「ご愁傷様です」への返事の際にはマナーを守って、重ね言葉や忌み言葉は使わないようにしたいですね。
言葉遣い以外にも厳守すべきマナーがありますので、相手にとって気持ちの良い返事を返しましょう。
重ね言葉や忌み言葉は言い換えて
重ね言葉
重ね言葉は、不幸が重なることや繰り返されることが連想される言葉です。
使用を控えるか言い換えることをお勧めします。「度々」は「よく」に、「色々と」は「あれこれと」に言い換えてご使用ください。
×:度々お気遣いいただき申し訳ございません
○:よくお気遣いいただき申し訳ございません
×:生前は色々と、お世話になりました
○:生前はあれこれと、お世話になりました
忌み言葉
忌み言葉は、「生きる」「忙しい」など不幸を連想させる言葉です。
「生きていた頃」は「生前中」に、「お忙しいところ」は「ご多用のところ」に言い換えてご使用ください。
×:生きていた頃は、お世話になりました
○:生前中は、お世話になりました
×:お忙しいところ、ありがとうございました
○:ご多用のところ、ありがとうございました
遺族も返事のマナーを守って
弔問客は、お悔みの挨拶はできるだけ短時間で済まそうと努めますが、遺族側としても短時間の挨拶にしたいと考えています。
特に、通夜や葬儀など慌ただしい日々を過ごしている時には、長話はできるだけ避けて、感謝の気持ちを込め返事は短めにしたいですね。
また「ご愁傷様です」は話し言葉と言われていますが、近年はメールで伝えることも多くなりました。「ご愁傷様です」のメールをいただいたら、葬儀などが一段落してから返事を出しましょう。
まとめ
「ご愁傷様です」と言われた時の返事として、代表的な感謝の言葉(=御礼)の具体例を見てきました。
「○○ありがとうございます」は一般的に使われる挨拶で、誰が使用しても問題ありません。
「○○ありがとうございます」以外では、相手や場所などによりマッチする言葉を選択するとよいです。万が一返事の言葉が出てこない時は、「○○ありがとうございます」を使えば間違いありません。
最後に「ご愁傷様」には、当て外れを皮肉る言葉という第二の意味もありますが、この記事では対象外のため扱いません。