「払拭」は「ふっしょく」と読みます。聞きなれないな~と感じる方も大勢いることでしょう。
政治家や企業が不祥事を起こしたとき、新聞やテレビのニュースで「払拭」の2字が良くないイメージでよく取り上げられます。
例えば「政治とカネの問題が問われており、責任を取るため議員辞職するだけでは疑惑は払拭されません」などと報道されます。
ではこれから「払拭」とは何か?意味を中心に使い方も含め、用例を交えながら分かり易く解説します。
目次
「払拭」とは
「払拭」の意味
国語辞典による「払拭」の意味から見ていきます。
「払拭(フッショク)」:ぬぐい払うこと。きれいに払いのけること。
(引用元:旺文社国語辞典)
「払拭」の「払」は、「左右に払いのける」の意味を持ち、「拭」は文字通り「拭(ぬぐ)う」「ふいて汚れをとる」の意味を持ちます。
つまり二字熟語「払拭」には、「ぬぐい払うこと」という意味合いがあることが分かります。
また「払拭」は、多くの場合「不都合なものや欲しくない(どちらかと言うと精神的に悪い影響を及ぼす)ものを、すっきりぬぐい払ってなくすこと」といったニュアンスで用いられます。
その用例として「悪評を払拭する」「疑惑を払拭する」などの言い回しがよく用いられます。ただ「ゴミを払拭する」は意味は通じますが、用い方としてはきわめて稀です。
文例としては「長年続いた社長が交代し旧弊が払拭され、会社の雰囲気が良くなった。」という一社員の感想には、「古い習慣・制度などの弊害がずっと続いてきたが、社長の交代で払拭され、会社が良くなってきたことはとても嬉しく思う。」というニュアンスが伝わってきます。
「払拭」の読み方
「払拭」の音読みは、一般的には「ふっしょく」です。
「ふっしき」(「しき」は「拭」の呉音)という読みもありますが、ほぼ相手に意味が通じません。一人で音読する時に使いましょう。
「払拭」の文法と使い方
「払拭」は名詞です。
主に「払拭する」という動詞的用法で用いられ、「払拭は~」「払拭の~」のような名詞的用法で用いられることは多くないようです。
「払拭」+「する」で「払拭する」というサ変動詞になりますが、「払拭する」の用法は2種類あります。
「不安感を払拭する」のような他動詞を使用する方法と「悪い評判が払拭される」のような自動詞を使用する方法です。
なお後者の「払拭される」は、「払拭する」の未然形「払拭さ」に助動詞「れる」が付いたものです。
「払拭」の類語
「払拭」と類語「一掃」の違い
「払拭」の意味は、「不都合なものをきれいに払いのけること」。「一掃」は、「目ざわりなものを残らず払いのけること」です。
共に払いのけることで同じですが、違いは2つ。
1つ目の違いは、「払拭」は精神的に悪い影響を及ぼす「不安感」「疑惑」などに対して。「一掃」は精神的・物質的には無関係、目ざわりになる「在庫」「不安」などに対して用いられます。
2つ目の違いは、「払拭」は「払いのけること」だけ、「一掃」は「全て残らず払いのけること」。「走者一掃の三塁打」は塁上の走者全員のこと、「冬物在庫一掃セール」は全ての冬物在庫品のことです。
※「一掃」の意味などを紹介した別記事もありますので、合わせてご覧ください。
→ 「一掃」とは?意味を中心に使い方や類語を詳しく解説
「払拭」の使い方(例文)
「払拭」の主な使い方は2種類です。「払拭する(サ変動詞)」を動詞的用法で用います。
・「払拭する」のように他動詞を使用する方法
・「払拭される」のように自動詞を使用する方法
「~を払拭する」
「払拭する」は他動詞として使用するサ変動詞です。
・「不安感を払拭する方法は、ランニングなどで体を動かすことです。」
・「悪い評判を払拭することは時間がかかります。」
「~が払拭される」
「払拭される」は、サ変動詞「払拭する」の未然形「払拭さ」に助動詞「れる」が付いたものです。
・「連戦連敗が続いたが今日勝利して、チームの暗い雰囲気が払拭された。」
・「30年続いた社長が昨年交代し旧弊が払拭され、会社の雰囲気が良くなった。」
まとめ
新聞やテレビのニュースで取り上げられる「払拭」の2文字。意味を中心に、語源・類語との違いや使い方などを解説してきました。
「払拭」を聞きなれないな~と感じる方もご理解できましたか。これからはテレビや新聞は、注意して見るといいですね。
「払拭」と「払」・「拭」との関係(近くて遠い)も興味深かったことと思います。