私は昔から、けっこうな頻度で「ありがとう」を言ってきました。誰かに何かをやっていただいたときは勿論、後で会った時には「先日はありがとうございました」と伝えます。

ところで、「ありがとう」は感謝の言葉ですが、最近聞かれるようになった「感謝しかない」という表現をご存じですか?

このような新しい表現が出現することはよくあることですが、違和感を感じることもあったりして、一般的に使用されるようになるには時間がかかることがあります。

では、新しい用法である「感謝しかない」になぜ違和感を感じるのかやその意味などを調べましたが、ビックリしたことがあります。

それは・・・「感謝しかない」には意味が2つある!

しかも…

  • 話し手が伝える意味と聞き手が受け取る意味が、真逆!

では、「感謝しかない」における違和感の感じ方や理由を中心として、その後の対応方法としては、使用するのか言い換えるのかをご一緒に判断していきましょう。

「感謝しかない」の意味

意味から見ていきましょう。


「感謝しかない」の意味は・・・

  • 「感謝の言葉しか見つからないほど、心の中が感謝で満ち足りている」です。

あるのは最高の感謝だけで、心の中全てを感謝が占め、満ち足りている状態を示しています。

「感謝しかない」に違和感を感じる?

「感謝しかない」はいつから使われた?

「感謝しかない」が使われ始めたのは、2010年代後半からと言われています。

その頃からスポーツ選手や芸能人など有名人が使い始めたことから、最近では一般の方も頻繁に使うようになってきました。なお国語辞典にはまだ登場していません。

違和感を感じるのはどんな時?

近年「感謝しかない(ありません)」と表明する人が増えました。

1時間も待たせて心から感謝する女性
普段は、「電車もバスもないので歩くしかない」や「会議には1名しか出席しない」のように、あきらめ感や不足感的なイメージがある「しか~ない」の表現を使って、「感謝しかありません」と言われたら、違和感を感じるかもしれません。

ではなぜ一部の聞き手は違和感を感じるのでしょうか。理由を解説する前に、「しか~ない」の意味と用法をご確認ください。

「しか~ない」の意味と用法

「しか~ない」には3つの意味があります。旧来用法の意味が2つ、①と②。「感謝しかない」など新しい用法として③が加わりました。

■「しか~ない」の意味

①特定の事柄だけを取りあげて、それ以外を全否定する強調表現。他に方法がない。義務や必要性としてねばならない。
②特定の事柄だけを取りあげて、数量や程度の軽薄短小少を強調する否定表現。
③特定の非常に強い感情や感覚だけを取りあげて、それ以外の感情・感覚の存在を全否定する強調表現。

用法もご覧ください。意味が理解し易くなります。

■「しか~ない」の用法

①:「電車もバスもないので歩くしかない」
②:「会議には1名しか出席しない」
③:「感謝しかない」

違和感を感じる理由

「感謝しかない(ありません)」に違和感を感じる理由は、聞き手の立場に立つと理解し易いです。

まず1つ目、「電車もバスもないので歩くしかない」と言われても、聞き手は違和感を感じません。歩く以外に方法がないという意味を理解しているからです。

2つ目の「会議には1名しか出席しない」と言われても、これもやはり聞き手は違和感を感じません。最少人数の出席で、人数不足を強調するという意味を理解しているからです。

ところが、「あなたには感謝しかありません」を伝えた場合、聞き手の中には、話し手の意味と真逆に感じる人もいます!

話し手が伝える意味は、新用法③の「心の中が感謝の存在だけで満ち足りている」というプラスイメージの感謝が伝えられます。

一方一部の聞き手が感じるのは、旧来用法①と②の「感謝以外を全否定された心の動き」や「少量で不足している感謝」で、マイナスの感謝がイメージされ、話し手とは真逆で曖昧な意味合いを感じるでしょうね!

その聞き手は、マイナスイメージの感謝だけを受け取ることになり、違和感を感じることでしょう。

違和感がなくなるのはいつ?

現在「感謝しかない」は、X(旧Twitter)やYouTubeなどSNSではよく使われています。それが拡散されさらに多くの人々に広がっていけば、「感謝しかない」への違和感もなくなり、その後定着する時期が訪れるでしょう。

そのころには、国語辞典などにも「感謝しかない」が使われ始めているかもしれませんね。

「感謝しかない」に違和感を感じつつ、言い換えを含めての使い方は、次章以降をご覧ください。

「感謝しかない」を使うなら文脈で

「感謝しかない(ありません)」とだけ伝えても、誤解や違和感を与えそうなので、単体文での使用はオススメできません。

どうしても「感謝しかない」を使うなら、相手に対して心から感謝している気持ちを、文脈で具体的に伝えることです。

下記のように感謝を具体的に伝えることで、今まで以上に信頼と絆を深めることができるでしょう。

■「感謝しかない」の文例

・多くのアドバイスと温かなサポートにより、プロジェクトを成功に導いてくれました。あなたには感謝しかありません。本当にありがとうございました。

・心温まるお祝いをいただき、とても幸せな気持ちと今後の人生をしっかり歩んでいく勇気もいただきました。部長には感謝しかございません。心から御礼申し上げます。

・急な病気により1週間も仕事を手伝っていただき助かりました。本当に感謝しかありません。また近いうちにお礼にうかがいますね。

なお文例のように、「感謝しかありません」の直前に「本当に」や「誠に」を付加するだけで、「感謝の気持ちで一杯」という意味に強調表現され、違和感も感じなくなります。参考にしてくださいね。

※ビジネスにおいて「感謝しかありません」を使いたい方はコチラ!
→ 「感謝しかありません」はビジネスで使える?違和感あるので要注意

違和感を与えないために言い換える

「感謝しかない」「感謝しかありません」「感謝しかございません」は、聞き手に違和感を与える可能性がありますので、使用を避けることも賢明です。

使用を避けるということは、違和感のない分かり易い表現で言い換えるということです。代表的な言い換え例をご紹介します。

■「感謝しかない」の言い換え文例

感謝の気持ちでいっぱいです
※詳しくはコチラ
→ 「感謝の気持ちでいっぱいです」をビジネスで使おう!敬語にご注目

心から感謝しております
心より感謝申し上げます
心より御礼申し上げます
感謝の念に堪えません

◆※「感謝しかない」を一挙に言い換えたい方はコチラ!
→ 「感謝しかない」を言い換えよう!類語表現を中心に一挙に大公開

まとめ

「感謝しかない」は、最初はスポーツ選手や芸能人など有名人が使っていましたが、近年はSNSなどにより一般の方も積極的に利用し、急速に広まっている印象があります。

また直近では「感謝しかない」と同じ用法で、より新しい表現が使われ始めています。

まとめの文を書きながら、X(旧Twitter)で調べてみました。「感謝しかない」が浸透してきた影響でしょうか、「感動しかない」や「満足感しかない」も使われています。

ひょっとしたら(2023年9月現在)、「感謝しかない」に違和感を感じる人が減ってきている現れかもしれません!?

しばらくの間、様子を見守りたいと思っています。